自転車の楕円リングにおけるペダリング効率の調査

寄稿者:ACK
寄稿日:2020年1月23日

概要

前回、ZWIFTで行った比較では、
トルク効率が上がるので、真円よりも低いケイデンスで同じW数を出せているのではないか。効率が上がる分同じケイデンスだと楕円のほうが出力は高くなるのではないか。
という予測をした。

今回、別の方法にて楕円リングを使用することによる効果を検証する。

仮説

通常の真円リングに比べ、楕円リングのほうがトルク効率が高いとする。
そのため、真円リングと比較すると、パワーやトルク効率に優位性が見られる。

実験方法

  1. 真円リング、楕円リングのそれぞれを搭載したバイクを用意する。
  2. それぞれのバイクを使い、トレーナー上で30kph、35kph、40kphを5分、3セットずつ計測する。また、疲労の影響を除外するため、計測は期間を空けて行う。
  3. 各リング、各速度における出力、トルク効率、ペダルスムースネス等、パワーメーターから出力される値の平均値を算出する。

被験者

今回の実験では、被験者1名(私)を用意した。
なお、被験者のデータは以下である。
 20代男性 163cm 55kg FTP234W

データ取込、解析方法

パワーメーターから出力された値は、wahoo ELEMNT BOLTへ出力される。
wahoo ELEMNTアプリでiPhone8へ取り込み、.fitファイルを出力しPCへ転送する。
.fitファイルの取込にはGoldenCheetahを使用した。同ソフトウェアで、(図1)のように取り込んだものを確認できる。

2020-01-22 (2)
図1

GoldenCheetahの機能でcsvファイルへ変換・出力を行う。
ワークアウト時間を揃えるために測定開始付近をカットし、ワークアウト時間を5分(300S)へ統一(図2)した後、3回毎のワークアウトの平均化を行う。

Workout時間調整
図2

測定したデータのうち、以下のものを使用する。
・速度(kph)
・ケイデンス(cad)
・心拍数(以下te)
・出力(watts)
・左右バランス
・トルク効率、Torque Efficiency(te)
(今回は左右それぞれのte値の平均((lte+rte)/2)をとり使用する)
・ペダルの滑らかさ、Pedal Smoothness(ps)
(今回は左右それぞれのps値の平均((lps+rps)/2)をとり使用する)

使用品
今回の実験では、以下のものを使用した。

・真円チェーンリングを搭載したバイク
重量7.2kg(前輪除く)
クランクとチェーンリングはShimano Ultegra R8000 50/34T 165mmを使用。

・楕円チェーンリングを搭載したバイク
重量7.3kg(前輪除く)
クランクとチェーンリングはROTOR ALDHU DM 52/36T 165mmを使用。

共通部分
・トレーナー
GROWTAC GT ROLLER F3.2 + GT-ePower
アプリ側の体重、バイク重量等のパラメーターは固定し、負荷はマニュアルモードで20%を設定。base値は130Wに設定。

・パワーメーター
Favero Assioma DUO

・スピードセンサー
Garmin

・ホイール
Shimano RS010

・タイヤ
Vittoria home trainer

・スプロケット
105 R7000 11-28

・サイクリングコンピュータ
wahoo ELEMNT BOLT

・PCソフト
GoldenCheetah, excel



結果

結果は以下のようになった(図3〜図8)。
トレーナーで負荷を設定しているため、速度は参考値である。
また、真円リングでの30kphにおける3回目の計測の際、心拍センサーの不良で常時80bpmを示していたため、データとして除外した。

30kph時での比較

avarage@30kph_2

図3

compare@30kph_2

図4

35kphでの比較

avarage@35kph
図5

compare@35kph
図6

40kphでの比較

avarage@40kph
図7

compare@40kph
図8

考察

真円リング、楕円リングどちらにも、どこかの数値が特出して高いという結果は出なかった。
ケイデンスは真円リングのほうが若干高いが、そのほかの数値はほぼ同等でありどちらか片方に有意性があることは確かめることができなかった。
使用者の身体データや、出力、ペダリングの習熟度によって結果が変わる可能性が考えられる。
今回は被験者1名のため、比較対象等は存在しない。
今回の被験者にとっては楕円リングの使用は効果がない(または薄い)ことが推測される。

使用しているサイクリングコンピュータでペダリングダイナミクスを見ることができればもう少し踏み込んだ解析もできるかもしれないが、残念ながら現時点でwahooは対応していない。

ALDHUチェーンリングの楕円率は12.5%である。50Tの真円リングと52T 12.5%の楕円リングでは、比較対象として適切ではない可能性がある。
今回のような30km/h以上で測定を行う場合、インナーリングを使用することはなかった。
FDを外し、同一のバイクでチェーンリングのみを交換し測定したほうがデータの比較実験として確実であったとされる。
タイヤの空気圧を統一しなかったことも影響が出ている可能性もある。
今後検証する際にはこのようなことも踏まえて行いたい。







グラフを作ったとき、それぞれの値がほぼ一緒のラインを引いたことにとても驚いた。
真円リングに戻してZWIFT等で様子を見てみるのもありかな。