今着目されている「AVAを冷やす」という効率のいい身体の冷却方法をインプットするタイミングとしたい。
そもそもAVAって何やねん
血管ってのは心臓から身体へ新鮮な血液を送り出す動脈と、
使い古したきったねえ血液を心臓へ送り戻す静脈があり、
毛細血管によって身体の隅々に血液が送られている。
AVAとは
「動静脈吻合(arteriovenous anastomosis)」
のことで、動脈と静脈を毛細血管をすっ飛ばして直接つなぐ太いバイパス血管である。
(吻合(ふんごう)って普段使わないよね)
で、タイトルの件なんだけど、
「動静脈吻合」の時点で既に血管の話なので、「AVA血管」と書くと「動静脈吻合血管」でつまり”血管吻合血管”みたいななんか気持ち悪い言い回しになる。
医学誌やそこを取材した記事はAVAと書いているが、他はだいたい「AVA血管」と呼んでるし、うちも開き直ってAVA血管と書く。
細けぇことはいいんだよ。言葉遊び禁止な(お前が言うか)
このAVA血管は手のひら、足の裏、顔まわりといった「毛の生えていない肌(無毛部)」に集中している。
毛細血管と違って大量の血液が流れているので、熱を逃がすのも取り込むのも爆速なのだ。
なぜ手のひらを冷やすと全身が冷えるのか
んで、この着目されているAVA血管だが、手にあるAVAを冷やすと身体全体が冷える。
理屈はシンプルで、
- AVAの多い手のひらを冷たい面に当てる
- そこを通る血液が熱を面に受け渡す
- 冷えた血液が心臓に戻り、全身をめぐる
- 深部体温が下がり、筋肉の温度も下がる
要は「血液を手のひらでいったん冷やしてから体に戻す」
車, エアコン, PCなど、熱を冷やすために使われるラジエーターが、
人間だと手のひらにあるわけだ。
Ineosが脚ではなく腕を冷やしていたのがまさにAVA血管の利用で、
「ウォームアップで温めたばかりの脚の筋温はそのままに、深部体温だけを下げる」ことを狙っているのだ。
温めるとこは温めたまま、冷やしたいとこだけ冷やす、理にかなっている。
これには科学的な裏付けもある。
スタンフォード発の研究①(2005年)(リンク)
40℃環境下でのトレッドミル運動時に手のひらから熱を抜いたところ
- 食道温(深部体温)の上昇ペースが鈍化
- 運動継続時間が約32分 → 約46分に延長
体温だけの話で、運動できる時間が4割以上延びている。
熱波による酷暑に襲われている欧州、AVAクーリングは立派な身体のチューニングメンテナンスである。
「いや、太い血管を冷やしたほうが冷えるだろ!」という人のために、他のデータも示そう
スタンフォード大の研究②(2015年)(リンク)
- 無処置
- 従来法:首・脇・鼠径部にケミカルコールドパック6枚
- AVA法:頬・手のひら・足裏にケミカルコールドパック6枚
という内容の実験を行った。
この実験結果をもとにこちらで再構成したグラフがこちら
従来言われていた血管の太い箇所の温度変化を示した青線よりも
AVA血管を冷やした緑線のほうが食道温(つまり身体の芯温)の低下への効果がより効率的なのだ。
いうてグラフを見ても首・脇・鼠径部を冷やすのことも有効ではあるともうかがえる。
しかし、そこは「太い血管が皮膚の近くを通ってる」から冷えるのであって、AVAのような人体専用ラジエーターではない。という頭の上書きが必要。
両方やればいい。我々には手も首もある。
ただし、10℃以上の温度で冷やすこと。
その理由を以下に続ける。
氷水でキンキンに冷やすのは逆効果(最重要)
これが一番の落とし穴。
AVA血管が有効に働く温度は、およそ10〜16℃という「ちょい冷たい」くらいの温度域とされている。
※温度域はクーリング製品のメーカー各社の説明(リンク)。
色々なメーカーの製品を調べてもだいたい12~13℃くらいを狙ったものが多いようだ。
これより冷たくすると、体は「寒い!」と勘違いして血管を収縮させる。
こうなってしまうと、血行が悪くなりAVAの通り道が閉じてしまい、逆に冷えない。
従来の首を冷やすタイプの研究ではあるが、
日本でも産業医科大がこんな論文を出しているから見てほしい(リンク)。
- 無作為14名の被験者
- 35℃環境で自転車エルゴメーターで運動させる
- 1,200gの氷入りネッククーラーの装着有無による対比試験
結果は、直腸温・食道温・額の皮膚温・心拍数・発汗量のすべてで有意差なし。
ただし「涼しく感じた」人は多かった。
上記がかなり危険で、
熱のストレスだけをマスクして、芯温は冷えない。
むしろストレス緩和により運動強度が上がり、熱中症のリスクが上がる可能性もある。
ということだ。
最後にこの論文のタイトルはこれだ。
「Inefficacy of neck cooling(首冷却の無効性)」。
Ineosが氷水ではなく「ぬるま湯」を使っていたのは、まさにこの温度域を的確に突いた運用だったわけだ。
バケツに腕突っ込んでるだけ。それが最先端の医学、というギャップも含めて実に良い。やりすぎは良くないのだ。
我々ホビーライダーはどう使うか
ここまででAVA血管を利用することによるクーリングを頭にインプットできた。
ではアウトプットして実践する機会も考えていきたい。
真夏のライド、コンビニ休憩で何をすべきか整理する。アイス?スイーツ?それももちろんいい。ライド中の甘いものは100倍美味く感じるしな。
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グループライド途中で駄弁ったりする時、ボトル補給の際など、
冷たいペットボトルやアイスコーヒーのカップを適当に置かず、「手に持つこと」でAVA血管を冷やす、ということを意識するようにしたい。
キンキンの氷菓より、缶やペットボトルくらいの「ちょい冷たい」を手で包むのがもっとも効率よく体温を冷やしてくれる。
考えてみるとコンビニのアイスコーヒー、あれは結構優秀な気がしてきた。
- 氷入りでカップ表面が10〜16℃くらいの「ちょうどいい冷たさ」になる
- 素手で握れる。むしろ握らないと飲めない
- 飲み終わるまでの数分間、勝手に手のひらが冷え続ける
- ついでにカフェインも入ってくる
これ両手で持って飲みながらAVA血管を冷やして、スイーツ食べてエネルギーチャージとお口と脳に清涼感与えればいいってことだな!
昔から言われているアームカバーを水で濡らすという行為、あれは「AVAに近い位置を気化熱で冷やす」ことができていたのだろう。
我々は理屈も知らずに、正解に近いことを経験則でやっていたわけだ。
Ineosの面々が腕を水に浸けてるのを見て「なんじゃこいつら」と思った奴らにも、実は毎年同じことを別の方法でやっていた人がいるのではないか?目は閉じてるから正直に挙手せい。
軽い休憩でも手首から先を水につけたり、休憩でサイクルグローブを脱いで手のひらを外気に晒すということもAVA血管を冷やすことにつながりそうね。
というか手のひらを塞ぐグローブ、AVA的には熱の非常口を塞いでいるとも言える。
夏用グローブは通気を塞がない手のひら部分がメッシュのやつがええんやな。あれ想像以上に意味あったんやな。はよ0.03mmのグローブ作って。
最後に一言書くと
血流の病気や心臓の持病がある人には血液の温度変化っていうのはかなり負担になるらしいから、そういう人は行動する前に主治医に相談してからね。
まあ言われなくてもわかってるとは思うが。
そもそも真夏の炎天下に自転車で出かける時点でそれなりに無茶をしている。
その自覚は持ちつつ、使える知恵は使って涼しい顔で無事に帰ってくる。
それがホビーライダーの週末の仕事。忘れたらあかん。
参考記事
~あとがき~
ということは、クーリッシュを手の熱で溶かす、という行為はAVA血管を縮めていたのか!





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